高島平から望める送信アンテナと伊集院光とラジオのゆくえ

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*あれこれ整理していたら1992(平成4)年2月4日火曜日の新聞が出てきました。ラジオ欄を見ると各局がしのぎを削って看板番組を送り出していて、ラジオマイスターらのにぎやかな声がよみがえってきます。

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*朝ワイドには森本毅郎、寺島尚正、高島秀武が並び、今でも朝の顔として長寿番組に君臨するパーソナリティーもいます。続いて、しゃべりの達人である大沢悠里、立川志の輔、玉置宏が揃い踏み、伝説となった「本気でドンドン」を梶原しげるが畳み込むように届け、高田文夫も軽妙でお気楽な笑いを振りまきます。

*昼ワイドは盤石な哲ちゃんに、破天荒な吉田&小俣コンビが猛追してトップの座を仕留めていく真っ最中。日中の熱を帯びたリスナーは夕方を迎えるころ、鶴光、那智チャコに行くか、渋い弦さんにダイヤルを合わせるか贅沢な選局を迫られます。

*夜ワイドの伊集院は若年リスナーを鷲づかみ。ラジオに確固たる地位を築き始めます。キッチュこと松尾貴史、岸谷五朗の影が薄いのはさもありなんです。

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*1992年の首都圏のラジオは、各時間帯とも満身を込めて妍を競っていました。特にニッポン放送は終日これでもかと話し手を繰り出し、隙のない陣容だったといえます。文化放送もライブ感を前面にパワフルな番組で、幅広い愛聴者をつかんでいました。TBSはどことなく漫然とした感ですが、来る2001年から20年間におよぶ聴取率首位獲得連覇の布石を打っていた時期だったのです。翌3月に賑々しくAMステレオ放送が始まる直前とあり高揚感が伝わり、朝のTBS、昼の文化、夜のLFと称され誰もがラジオの明るい将来を信じていた時代でした。


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*翻って2022(令和4)年3月8日火曜日の在京AM3局ラジオ欄を見ます。朝は森本と寺島が続投中です。ちなみに高島は2017(平成29)年10月まで「中年探偵団」を担当していたので、ラジオ番組は持久走のようなものです。TBSの午前ゾーンは30年間続いた大沢悠里からバトンを引き継いだのが伊集院で、おたくネタを織り交ぜ時事問題に率直に斬りこむ勉強家ぶりも好感されパーソナリティーが板についてきたところです。

*ところが1月に突然降板の告知が。三顧の礼を尽くして迎えられたはずのご当人は多くを語りませんでしたが、異変発生は明らかです。終生の番組と期待された「伊集院光とらじおと」は、アシスタントへのパワハラ騒動や高ギャラ説など錯綜するなか、6年間の短命にて落城。3月24日をもって居城を明け渡します。


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*30年前の「Oh!デカナイト」が好評にもかかわらず4年間で〝強制終了〟となったことを思い起こします。今回も局側との軋轢を嫌った伊集院の姿勢がラジオ界に新たなハレーションを発するのでしょうか。27年間続くTBS「深夜の馬鹿力」は継続するのか他局にレギュラー番組を持つのか。ギャラクシー賞の受賞など秀でた企画力と実行力で抜きん出る伊集院の次の一手はいかに。


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*せっかくなので、1992年のFMラジオ欄に改めて目をやります。1985年のFM横浜を皮切りにFM開局ラッシュは続き、AM・FM入り乱れてリスナー獲得競争に火が付くことになります。首都圏2番手の民放FM局となった横浜は洋楽とレストーク編成で若者の支持を集め、「エフヨコ現象」なる一大ブームを巻き起こしました。

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*しかし、その3年後に日本のFMラジオに革命を起こすJ‐waveが燦然と現れます。時報を入れない切れ目のない編成、番組を音楽でつなぐ浮遊感、バイリンガルDJの多用、ニューミュージックをJ-POPと規定、話題を海外に求める国際性など音楽と東京を強く意識させる洗練された空間を創出するFM局として参入。バブル経済を謳歌する世相と相まって、経済、文化にまで影響を与えるメディアとして〝神格化〟される勢いで受け入れられたのです。同局誕生の社会的背景をテーマに講座を開設した大学が出てくるほど注目を集めました。


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*1992年のJ‐waveの番組表は、ほぼ開局時のままです。スペイン、ロンドン、NY、ヨーロッパの文字を散りばめ、東京はTOKIO表記です。正午から16時まで延々洋楽が流れます。NSPPとはノン・ストップ・パワー・プレーを差します。Fヨコ、BAYも洋楽とバイリンガルDJ路線を取り、NACKとTOKYOはAMっぽい雰囲気でした。付け加えると最後発のInter-FMは2014(平成26)年開局なので当然未掲載です。

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*さて2022年のFMラジオ欄。かつての片りんは全くと言っていいほど見当たりません。「ジェットストリーム」がかすかに我が道を歩んでいるだけです。実際にFMを聴くと、お題にリスナーが応じたり、やたらに健康商品通販や過払い金返済を促す法律事務所のCMが流れたりで、かつて売りだったオシャレ空間創出など影もカタチもありません。1990年代初頭のバブル経済終焉以降、日本経済の後退は顕著になり〝一億総中流〟の幻想すら消え、浮き足だった空気は霧消。大口スポンサーの撤退は各局に打撃を与えたのは自明の理です。J-waveも路線変更を経て、現在に至っています。開局当初からナイター中継を行い「FMとAMの垣根は不要」とカジュアル路線を進んできたNACK5は先見の明があったといえます。

*重装備の送信設備更新による経営圧迫が主因として、2028年にほとんどのAM局がFM局に全面転換することを決定。といっても数局を除き、新たに90~108MHz帯をカバーできるワイドFMラジオを持たなければ番組は聴けなくなります。AM波・FM波同時放送が終了するまでにワイドFMラジオの普及拡大はAM局にとって絶体絶命の至上命題です。


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*高島平から、天に突き刺す紅白模様の鉄柱を眺めることができます。2㌔離れた荒川の向こう岸にあるTBSラジオの戸田送信所です。100kwの大出力で関東一円に954KHzの電波を発信しています。東京の城北地域の受信感度はMAX+で、分厚い音が届いています。

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*2028年、その戸田送信所は無用の長物になってしまうのでしょうか。そして手元のラジオやカーラジオのAMバンドはNHK第1、第2(これも停波か)、AFNしか聴けなくなり、閉店がらがらのシャッター街のように寂しくなります。その時、ワイドFMに引っ越す老舗のラジオ局の周波数にチューニングできる人、する人はどれだけいるのでしょうか。

*そして伊集院は果たして、どこかのFM局で持ち前のしゃべりに磨きをかけているのか。それともYouTubeで発信しているのか。ラジオ界は存続がかかった、過去に経験したことのない大変革期を迎えています。


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