キンカ堂破産 明暗くっきり池袋






◆地価の下落が続く中、国土交通省が2月24日発表した地価動向によると、1月1日時点の全国主要150地点の地価の上昇地点は唯一、池袋東口でした。東京の繁華街でもここだけが〝勝ち組〟となりました。ビックカメラの本陣に、「ヤマダ電機 LABI1 日本総本店池袋」を掲げて2009年10月に攻め入ってきたのがヤマダ電器。安値競争に火花を散らし、新宿、秋葉原からも客を誘引する勢いを生み出し、街に活気をもたらしているということです。
◆元気なはずの池袋ですが、盛者必衰とも言うべき現象に目を奪われます。2月22日、手芸用品のキンカ堂が45億7千万円の負債を抱え自己破産しました。嗜好性の強い商品を多品種多在庫負担するビジネスモデルは、もはや通用しなくなったのです。デフレ不況のすさまじさ、顧客の世代交代、流通経路の変化の荒波が容赦なく目抜き通りに店を構える老舗をも襲うさまをいやおうなしに実感させられます。シャッターが固く降ろされた店頭には人だかりが膨らみ、破産手続き開始の告示書を見つめていました。行き交う人から「えっ、キンカ堂ってつぶれちゃったんだ」という会話も聞こえてきます。
◆キンカ堂のシャッターには、大学ノートを破り走り書きしたメモや丁寧にしたためたと思われる惜別の手紙が、何通もかつての顧客が貼り付けました。激変する商業環境に追いつけず、もはや力尽きたのです。軒を並べるユニクロが空前の利益を上げているのですから、これほどの皮肉はありません。


◆それは、わずか数百メートルしか離れていないカメラのさくらやも同じことでした。「安さ爆発みんなのさくらや」は「ビックビックビックビックカメラ」「新宿西口駅のそばカメラはヨドバシカメラ」と三つ巴の商戦を競っていました。ビックカメラとヨドバシカメラが覇権を争うなか、いつのまにか存在さえも希薄になり、ついには2月末全店閉鎖に至ったのです。シャッターには、アフターサービスとポイントはベスト電器が引き継ぐ旨の張り紙があり、迫り来るビックカメラとヤマダ電器の巨城の前に白旗を挙げ下城した落武者のように映ります。
◆池袋に本店を置く西武デパートは、とうにセブン&アイグループの傘下に入りイメージ戦略を担った有楽町店の閉店を決断せざるを得なくなりました。経済活動は市場のメカニズムに任せるのは自然です。しかし、目には見えにくいサービスや付加価値をこれでもかとそぎ落として、価格の多寡のみを価値判断とする潮流が行き着く先は。
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