高島平からTVチャンピオン誕生!
◆本紙111号(8月1日発行)に玉稿を寄せられた旅行作家の中尾隆之さん(65)が快挙を成し遂げました。8月9日放送の「TVチャンピオン2 全国お土産銘菓通選手権」(テレビ東京)に出場、並み居る強豪をはねつけ見事「銘菓通王」に輝きました。その戦いぶりは、まさに手に汗握る熱戦でじわじわ迫る巧手と、ここ一番の勝負強さは見る者をエキサイトさせます。
◆登場メンバーは4人。いずれも我こそはチャンピオンにと意気込む好敵手揃いで序盤から火花が散ります。ステージ1は常識問題で上位3人選出。パッケージ当てクイズで試合の幕は落とされ、「白い恋人」「萩の月」「もみじ饅頭」まで全員正解。均衡を破ったのは中尾を含む2人。「おたべ」の真正パッケージ当ては、女性の杖の持ち手から本物にたどり着き、観察眼の鋭さを発揮して一歩リード。続く「鳩サブレ」で外したものの〝仰げば尊し和菓子の恩〟のエピソードを披露して沸かせます。キャッチコピー当てで「東京ばな奈 見ぃつけたっ」を難なくクリアして同率2番手に。ところが、順調と思われた戦いぶりはここまで。「御菓子御殿 紅いもタルト」でまず1人抜け残り席2。5得点の3人が同点決勝へ。「信玄餅」の包み紙当てで2人目が決まると張り詰めた空気に。真っ先に抜け出ると思われた中尾は、リタイアの危機に襲われます。最後の1席を巡り菓子マニアの主婦との一騎打ちとなり、後のないサドンデスにもつれ込みます。出題VTRを凝視する2人。スタート4秒。満身の一打となった早押し。浪速屋製菓の「柿の種」を的中させ、ぎりぎり滑り込んでのステージ1突破となりました。接戦を制し安堵する表情とは裏腹に、ここは態勢を急ぎ整え直します。
◆ステージ2は広告に関する出題で3人のうち1人がふるい落とされます。もちろん難易度はアップ。キャッチコピー当ての「夜のお菓子 うなぎパイ」に次ぐ「ナボナ」では敵失に恵まれ中尾1ポイント獲得。王選手のナボナCM出演の裏話を〝解説〟して再び波に乗り始めます。3問目は超難問。しかし、中尾だけ果敢に食らいつきます。銀座資生堂パーラーのチーズケーキを当てただけでも「やるな!」でしたが、遠い記憶を辿るかのように一語ずつ紡ぎ出するコピーには思わず画面に引き寄せられます。「銀座に生まれ銀座で育った」。一瞬の沈黙に続いたピンポ~ンには日本中からざわめきが湧き上がるようでした。中尾は会心の破顔一笑。想定外の意表を突く奇問をものにして、早くも2点先取で対戦者を待つばかりに。百戦錬磨のベテランライターの底力を見せ付けます。ステージ1を満点でトップ通過した菓子卸会社勤務の男性は意外にも脱落の憂き目に。
◆〝予選〟を終え番組はいよいよクライマックスへ。頂上決戦は5点先取で決着。対戦相手はナムコテーマパークを企画する松本学さん。体格もよく、いかにも強敵。テレビ局は2人のチャレンジャーをとことん競わせる、あの手この手の企画を繰り出して実力を測ります。1回戦は推薦隠れ銘菓対決で、各自が持ち寄った銘菓を3人の審査員にプレゼンテーションして実食させて得点を競うリアルな戦い。テーマ「うわふわ」は中尾の「鹿の子餅」(富山・不破福寿堂)が松本の「もっちープリン」(福岡・こじま亭)を抑えてまず1点。2回戦は同じくテーマ「びっくり」で今度は松本の「珠州焼の里」(石川・メルヘン日進堂)が中尾の「一口香」(長崎・茂木一口香本家)を下して1点。神田川俊郎、結城摂子、土屋公二の審査員の判定は好勝負と出た格好。両者譲らず1対1のドロー。
◆3回戦は4択問題でニセモノ当て。A.切腹最中、B.ワイロ最中、C.ごますり団子、D.出世饅頭のうち松本がDを当て2対1に。4回戦は同じテーマでA.ちくわ饅頭、B.アジの開き饅頭、C.餃子饅頭、D.信玄桃。ここまでくると、どれもありそうでどれもなさそうで見るほうは当てずっぽうに頼るばかり。中尾の手許が早く、Bを選択。正解。勝負は振り出しに戻り2対2でまったくの互角。両者決め手を欠くまま終盤へ突入。
◆5回戦は製造場面から銘菓を当てる超カルト問題。原料をかき混ぜるだけなのに対戦者は「ひよこ」(ひよこ本舗吉野堂)を割り出しズバリご名答。ところが中尾も負けじと6回戦「気になるリンゴ」(ラグノオささき)で得点して三度目の同点に持ち込み3対3。ひたひたと追う中尾の粘り腰に行方は予測不可能に。どちらも銘菓通王にふさわしく思えてきました。
◆7回戦はズームアウト問題でどアップ映像から徐々に全体を見せて銘菓を当てます。逃げ足が速かったのは中尾。松本のお手つきにも助けられ自信満々に「なんじゃこりゃ大福」(宮崎)を回答。これが命中。3対4で絶好のアドバンテージ獲得。ついに王手をかけます。対戦者松本は心なしか息切れした様子。最終となった問題には、かなりポピュラーな銘菓が登場します。映った餡子はいかようにも見えるのに、王者は違いました。すかさず、しかも確信を持って「一六タルト」(愛媛・一六本舗)を正答してサヨナラ決勝点をもぎ取りました。当然、松本も百も承知のはずでコンマ以下秒を制した中尾の瞬発力は快挙以外の何ものでもなく、体力的にも勝っていました。番組はこの決勝打を引っ張りに引っ張り12本のCMを挿入後、栄光のシーンを放映して最高潮に盛り上げました。
◆退場の危機を乗り越えて鮮やかに「銘菓通王」に輝いた中尾隆之さんは、さわやかな人柄も心地よく硬軟交えた戦いぶりで見るものに感銘を与えました。絶版になった中尾さん執筆の「全国和菓子風土記」(昭文社)のリニューアル版出版を熱望する声が各方面から届くことは必至でしょう。本紙編集部には「見たわよ!中尾さん素晴らしかった」の声が早速寄せられています。高島平にヒーロー誕生です。
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